Skip to Main Content
ニュース&イベント: 雇用/労働法/福利厚生関連情報

雇用上の意思決定におけるAIの利用を規制する州が急増するか

9.29.25

採用活動や雇用上の意思決定を行う際に、人口知能(以下「AI」といいます)を利用することを規制する包括的な連邦法は現在のところ存在しません。他方で、各州では、すでに制定された法律や提出された法案を、いわば「パッチワーク」のように組み合わせながら雇用上の意思決定におけるAIの利用への対応を進めています。直近では、コロラド州およびイリノイ州において、採用活動および雇用上の意思決定におけるAIの利用を規制する法律が可決しました。いずれの法律も2026年に施行される予定です。カリフォルニア州、バージニア州、テキサス州、ニューヨーク州およびコネチカット州を含む他の州においても、同様のAI規制法がすでに施行されているか、あるいは審議されています。

コロラド州において2026年2月1日に施行されるコロラド州AI法(以下「CAIA」といいます)は、雇用主が雇用に関連する「重大な決定(consequential decisions)」を行う際にAIを利用する場合、従業員を「既知または合理的に予見可能な、アルゴリズム・データによる差別(algorithmic discrimination)のリスク」から保護するために「合理的な注意(reasonable care)」を払うことを雇用主に義務づけています。加えて、CAIAは、同法の適用対象となる雇用主に対して、通知、リスク管理およびリスク評価に関する重大な義務を課しています。

イリノイ州において2026年1月1日に施行されるイリノイ州AI法は、雇用主がAIを利用してイリノイ州人権法(以下「IHRA」といいます)に定める保護特性(protected characteristic)に基づく差別的効果を生じさせること、またはIHRAに定める保護分類(protected class)に代わる指標(proxy)として郵便番号を使用することを禁じています。さらに、同法の適用対象となるイリノイ州の雇用主は、求職者および従業員に対して特定の通知をすることが義務づけられます。

各州で次々とAI規制法が施行されるにつれて、雇用主は各AI規制法における「AIシステム」の定義が微妙に異なるという状況に直面します。たとえば、CAIAでは、「AIシステム」を、「重大な決定を行うもの、またはかかる決定をする際に実質的な要因となるもの」と定義し、主に「リスクの高い」AIシステムに焦点を当てています。ここにいう、「重大な決定」とは、雇用または雇用機会の提供、またはそれらのコストに重大な影響を与える決定を意味します。イリノイ州AI法では、「AI」を、「明示的または黙示的な目的のために、インプットされた内容から、アウトプット(たとえば、現実世界や仮想空間に影響を与え得る、将来予測、コンテンツ、推奨事項(recommendation)、または決定など)をどのように生成するかを推論する機械ベースのシステム」と定義しています。CAIAおよびIHRA改正法は、共に、一般的に最も知られているChatGPT、CopilotまたはGeminiといった生成AI(すなわち、人間が作成するようなテキスト、画像、音声、動画、または他のコンテンツを生成することができるAIシステム)を規制対象としています。

当事務所では、今後も、急速に変化する雇用分野におけるAI規制法の法制動向を注視してまいります。当面の間、雇用主は、人事担当者に対して、自社におけるAIの利用状況を把握し、そのAIの利用が特定のAI規制法の対象となる可能性があるか否かを分析するよう指示することをお勧めします。

本稿の内容に関してご質問がございましたら、ノーリーン・アムジャッド弁護士(Naureen Amjad)、リバーナ・サックス弁護士(Riebana E. Sachs)または雇用/労働法/福利厚生部門のメンバーまでお問い合わせください。

増田・舟井法律事務所は、米国でビジネスを展開する日本企業の代理を主な業務とする総合法律事務所です。
当事務所は、シカゴデトロイトロサンゼルス、およびシャンバーグに拠点を有しています。

© 2025 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。