相次ぐ申請料の増額と導入- H-1Bビザにおける10万ドルの申請料のさらなる延長と新たな申請料(10万3,265ドル)導入の可能性
2026年9月18日、米政権は、「特定の非移民H-1Bビザ労働者の入国制限(Restriction on Entry of Certain Nonimmigrant H-1B Workers)」に関する大統領布告第10973号の有効期間をさらに1年間延長しました。7月以降、裁判所により当該布告の実施継続が差し止められているにもかかわらず、米政権は依然として布告の延長を発表しました。この制限は2027年9月21日まで有効となります。
当該布告は、主に、米国外に滞在し、米国大使館・領事館でH-1Bビザを取得する必要がある者、または認可済みのH-1Bビザ嘆願書を用いて米国への入国を申請する必要がある者(カナダからの入国者など)に影響を及ぼします。一方、次のいずれかに該当するH-1Bビザ労働者に対しては、この制限は適用されません。
- 米国滞在中に在留資格(ステータス)をH-1Bステータスに変更する者
- H-1Bビザ を保持している中で雇用主を変更する者
- 既存のH-1Bステータスを延長する者
ただし、米国移民局(USCIS)が、当該個人が米国内でステータスを変更もしくは延長、または雇用主の変更をを完了することができず、代わりに米国外でH-1Bビザを申請しなければならないと最終的に判断した場合には、その時点で入国制限が適用される可能性があります。もっとも、当該個人の業務が国益に資し、米国の安全保障や福祉に脅威を与えない旨の認定を米国移民局から得た場合は、この限りではありません。
米政権が報告した結果
延長を発表するにあたり、米政権は、この政策によりH-1Bビザプログラムへの依存度が低下したことを示す証拠として、以下の指標を挙げました。
- 10万ドルの手数料の支払い後、700件以上のH-1Bビザ嘆願書が承認されたこと
- 米国大使館・領事館における新規H-1Bビザ申請件数は、2025年度から2027年度にかけて97%減少したと報告されていること
- 大手ITアウトソーシング企業によるH-1Bビザ発給枠の登録件数は、2027年度において24,946件から2,055件へと92%減少したと報告されていること
- 「米国修士号枠」のH-1Bビザ登録件数は、45.1%から66.1%に増加したこと
- 2027年度のH-1Bビザ登録件数の約46.3%は、賃金レベルIIIまたはIVに分類される職種に関するものであり、より高給の職種における登録件数の増加を示唆していること
米政権は、これらの変化が、当初の目標であったエントリーレベルの職種ではなく、高度なスキルと高給の労働者に対するH-1Bビザプログラムの利用拡大を示していると主張しています。
⇒雇用主が留意すべき事項
ステータスの変更、転職、および延長申請のほとんどは影響を受けない一方で、ビザの発給や海外からの入国を必要とする状況においては、10万ドルの申請手数料が課される可能性があります。特に、米国外への渡航を予定している従業員や、H-1Bステータスを有効化するために米国大使館・領事館での手続きが必要となる可能性がある従業員については、予め綿密に準備・計画することが今後も極めて重要です。
特定のH-1Bビザ保持者に対する入国制限に関するさらなる詳細は、当事務所発行の2025年9月22日付クライアント・アラートおよび2025年10月21日付クライアント・アドバイザリーをご覧ください。 (いずれも英語版のみとなります。)
雇用主がH-1Bビザにおける10万ドルの申請料に対応し続ける中、米国移民局は10万3,265ドルのH-1Bビザ追加申請料の導入を提案
米国移民局は、H-1Bビザ発給枠の対象となるすべての申請(H-1Bビザ抽選で当選後に提出される嘆願書)に対し、103,265ドルの新たな申請料(いわゆる「税金(tax)」)を課す規則案を発表しました。 この手数料は、Form I-129の申請手数料、難民認定手数料、不正防止・検知手数料、ACWIA手数料、優先審査手数料(利用する場合)、および適用されるその他料金を含む、既存のすべてのH-1Bビザ申請手数料に加えて課されることになります。
新たに提案された手数料は、下記には適用されません。
- 大学、非営利の研究機関、および政府系研究機関により提出され、H1-Bビザ発給枠の対象外となるほとんどのH-1Bビザ嘆願書
- H-1Bビザの下での転職(雇用主の変更)
- H-1Bビザの延長申請
当該手数料から徴収される推定88億ドルは、H-1Bビザプログラムによって直接的または間接的に影響を受ける政府機関(米国移民局、移民・関税執行局(ICE)、税関・国境警備局(CBP)、労働省(DOL)、国務省(DOS)、および移民審査執行局(EOIR:移民裁判所)など)の移民業務全般の支援に充てられることになります。
上記措置が実施に至った場合、現行の10万ドルの申請料およびその他申請料に新たに提案された追加申請料が加算されるため、特定の採用者のための新規H-1Bビザ申請において、20万ドル超の費用を米国政府に支払わなくてはならない可能性があります。 ただし、米国移民局がこの規則案を最終決定する場合、(他のH-1Bビザ申請料と異なり、)米議会による承認を得ていないことから、新たに提案された申請料の合法性を争う訴訟が提起される可能性が極めて高いと考えられています。
家族ベースの永住権(グリーンカード)申請におけるスポンサーの信用調査
米国移民局は、2026年10月1日以降に提出される家族ベースのグリーンカード申請に必須となるForm I-864「INA第213A条に基づく扶養宣誓供述書(Affidavit of Support Under Section 213A of the INA)」を改訂しました。改訂版には、扶養者となる家族の一員が提出する扶養宣誓供述書の十分性を評価する際、米国移民局が消費者信用報告の情報を入手することを許可するプライバシー情報開示同意が含まれています。
当該改訂は、主に家族ベースのグリーンカード申請案件に影響を及ぼします。これは、家族ベースのグリーンカード申請を行う者のほとんどが、スポンサーとなる米国市民または永住権者に関するForm I-864の提出を求められるからです。
一部の報道では、当該改訂はグリーンカード申請者に対する新たな「信用調査」要件であると報じられていますが、米国移民局はスポンサーに求められる最低限のクレジットスコアを設定していません。また、米国移民局は、すべてのケースで信用報告書を取得するとも発表していません。したがって、当該改訂により、USCISは「扶養宣誓供述書」に署名する人物の経済状況を検証するための新たな手段を得ることになると考えられます。 現行の規則ではすでに、スポンサーが十分な収入(一般的に、適用される連邦貧困ガイドライン(Federal Poverty Guidelines)の少なくとも125%)を得ていることを証明することが求められているほか、米政府によるスポンサーの雇用、収入、資産に関する情報の確認が認められています。
米国労働省(DOL)によるPERM現代化規則案
DOLは、PERM労働認定プログラムの大幅な現代化を進めています。このプログラムは、ほとんどの雇用主が、EB-2またはEB-3カテゴリーで外国人の永住権をスポンサーする前に経なくてはならない手続きです。 「PERM移民ビザプログラムにおける労働市場テストの現代化および米国労働者の保護強化(Modernizing the Labor Market Test and Improving Protections for U.S. Workers in the PERM Immigrant Visa Program)」と題された新規則案は、2004年以降初となるPERM関連規制の包括的改定となる見込みです。DOLは2026年9月14日に当該規則案を情報規制事務局(OIRA)に提出しましたが、その本文(内容)は現時点で未公表となっています。
予想される改定
- 採用要件の変更
- レイオフに関連する義務の拡大
- オンラインによる採用方法といった現代的採用手段のさらなる重視
過去20年間にわたる技術や採用慣行の変化を鑑み、DOLは、最低限の採用基準、レイオフの対象となった米国人労働者の保護、差別のない採用・雇用慣行、および雇用主の記録保存要件など、改革の余地のあるいくつかの分野を特定するに至っています。
雇用主に影響を及ぼす可能性のある最も重要な分野の一つは、PERMにおける採用活動です。現行の規則は20年以上前の採用慣行に基づいて策定されたもので、「学士号(Bachelor's degree)以上」の学位を必須とする職種の場合、州の労働局への30日間の求人登録、日曜版新聞への2回の広告掲載、および3つの追加的な採用手順を義務付けています。 DOLが技術の進歩や業界毎の慣行の変化に言及していることから、提案される新規則では、雇用主によるPERM対象ポジション(職位)の求人広告の手法が見直され、現在雇用主が利用しているオンラインによる採用手法がより重視される可能性があります。
雇用主が注意すべき理由
人員削減(レイオフ)を実施した雇用主は、特に注意を払う必要があります。現行のPERM規則の下では、雇用主が同一または関連する職種でPERM申請を行う前の6か月間に、雇用が予定される地域でレイオフを実施していた場合、当該雇用主は、原則、解雇されたものの、PERM対象職の適格性を有する可能性がある米国人労働者に通知し、当該労働者の採用を検討しなければなりません。 労働省(DOL)は、新規則の目標として「レイオフの対象となった米国人労働者に対する保護措置の強化」を明示的に掲げており、新規則案が公表されるまでは具体的な改定内容は不明であるものの、このような義務が拡大またはその他の形で変更される可能性があります。
- 申請手続きが今後さらに複雑になる可能性
- 採用要件が強化される可能性
- レイオフに関連する審査が拡大する可能性
⇒雇用主が留意すべき事項
2027年にPERM申請を予定している雇用主は、新規則が公表・確定すれば、将来の採用およびレイオフに関連する要件がより複雑になる可能性があるため、適宜現行の枠組みに基づいて手続きを開始することを検討すべきです。
*上記以外の移民法ニュースに関しては、英語版をご参照ください。
Follow us on LinkedIn for additional Legal Updates.

増田・舟井法律事務所は、米国でビジネスを展開する日本企業の代理を主な業務とする総合法律事務所です。
当事務所は、シカゴ、デトロイト、ロサンゼルス、およびシャンバーグに拠点を有しています。
© 2026 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。