2026年2月20日、注目を集めていた Learning Resources, Inc. v. Trump事件において、米国連邦最高裁は、6対3の多数により、国際緊急経済権限法(IEEPA)が大統領に関税を課す権限を付与していない旨判断し、同法に基づく関税を無効とする判決を下しました。多数意見を起草したロバーツ主席判事は、IEEPAが認める輸入規制の権限は、憲法上議会に付与されている、輸入品に課税する権限をも含むものと拡張して解釈することはできないと結論づけました。また、ロバーツ主席判事を含む判事3名の一部意見は、いわゆる重要問題の法理(major questions doctrine)に言及し、政権による、広範かつ多額の歳入を生み出す関税を課すというIEEPAの運用は、議会が明確に承認していない大統領権限の抜本的拡大(transformative expansion)に当たると評価しました。
過去のクライアントアドバイザリーで述べたとおり、本判決に基づき、IEEPAに基づき既に支払われた関税の返還が自動的に行われるものではありません。本判決は救済の枠組みを示しておらず、反対意見も、今後の返還プロセスは混乱を伴い長期化する可能性が高いと警告しています。政権側も同様に、返還に関する問題について「訴訟を要する」との姿勢を示しており、今後数年にわたり試験的訴訟や手続面での争いが続くことが予想されます。既に米国国際貿易裁判所(CIT)に予防的な訴えを提起している輸入者は比較的有利な立場にありますが、まだ提起していない輸入者は、28 U.S.C. §1581(i) に基づく2年の出訴期間が進行し続けていることを踏まえ、CITでの救済申立てを行うべきか早急に検討する必要があります。
予想されていたとおり、政権は無効となった関税を迅速に代替する動きにも出ています。判決から数時間以内に、トランプ大統領は1974年通商法(Trade Act of 1974)122条に基づき全輸入品に一律10%の関税を課す大統領令に署名するとともに、同法301条に基づく新たな調査を実施する方針を発表しました。同法122条に基づく関税は税率が15%までに制限されているほか、議会の承認がない限り150日で期限を迎えるため、これらは今後、例えば同法301条および1962年通商拡大法(Trade Expansion Act of 1962)232条に基づくより恒久的な関税制度を構築しようとする間の「つなぎ」と位置付けられます。
輸入者の当面の課題は、第一に、無効とされたIEEPA関税に関する返還請求権を保全し行使すること、第二に、別の法的根拠に基づく今後の新たな関税の発動に備えることです。あわせて、過去のクライアントアドバイザリーにおいて言及した、複数の返還手続の重複、関税コストの契約上の配分、最終的な返還利益を誰が享受するかをめぐる交渉や紛争の可能性といった実務的な論点にも対応していく必要があります。
増田・舟井法律事務所は、米国の関税制度をめぐる動きを引き続き注視し、変化の激しい米国の関税環境へのクライアント様の対応を支援してまいります。
増田・舟井法律事務所は、米国でビジネスを展開する日本企業の代理を主な業務とする総合法律事務所です。
当事務所は、シカゴ、デトロイト、ロサンゼルス、およびシャンバーグに拠点を有しています。
© 2026 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。