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ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

ESGであることは市場での利益につながる…だけではない

8.18.21

近年、市場において、企業が環境・社会・ガバナンス(ESG)問題への取組みを目標とするよう働きかける傾向が明確かつ顕著になってきており、投資家と企業は、大きなプレッシャーのもと、戦略をESGにより焦点を当てたものにすることで、このような要求に応えようとしています。ESGの真の価値創造メカニズムについては引き続き議論がなされているものの、最近の実証的研究では、ESGスコアの高い企業はESGスコアの低い企業に比べて資本コストが低いという強力な実証的証拠が一貫して示されています。さらに、大手インデックスプロバイダーであるMSCIは、ESGスコアの低い企業がESGスコアを向上させると、資本コストが減少することを明らかにしています。

ESG懐疑論者は、ESGおよび他の財務業績指標との実証的関係性の弱さや、企業は意識の高い投資家を惹きつける目的でESGに配慮しているという誤った認識を世間に植え付ける「グリーンウォッシング(greenwashing)」の可能性を指摘しています。このような批判を受けて、米国では規制面での対応が求められるようになったことから、米国証券取引委員会(SEC)は、市場に開示されるESG情報の一貫性と透明性を高めるための詳細なガイダンスを提供することを表明しました。規制の枠組みが改善されれば、真にESGを意識した戦略を実施している企業が、より安価な資本へのアクセスという報酬を市場から受ける度合いは、ますます高まるでしょう。つまり、「良い行い」の実践が、価値あるプロジェクトを成功させる上で必要な資本コストの削減という形で、より大きな利益をもたらす可能性があるのです。 

ESGへの取り組みの先駆けといえば伝統的に大規模な上場企業とされてきましたが、ESGが資本コストに与える影響は、利害関係者の範囲が狭い非上場企業の方がより認識しやすいといえます。したがって、米国進出を検討する多くの日本企業や成長を目指す日系米国子会社においては、規制の枠組みの変化を注視しつつ、ESGを意識した意思決定を今行うことが、今後、成長戦略を利することになるでしょう。

© 2024 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。