2004年に制定されたカリフォルニア州私人代理執行法(California Private Attorneys General Act, “PAGA”)は、従業員が政府に代わって莫大な法律上の罰金を回収するため、従業員個人および同様の状況にある全ての従業員を代表して、一従業員が雇用主を提訴することを認めています。同法は、雇用主に対して、従業員が被った実損害額の賠償に加え、桁違いな罰金を請求することを可能にしています。同法に基づき回収した罰金は、州に65%、被害を受けた従業員に35%の割合で配分することとされています。しかしながら、同法は制定以来、雇用主に対する不当訴訟の手段として用いられているとの批判を受け、抜本的な改正が求められてきました。
2024年に行われたPAGAの大幅な改正に続けて、さらなる改正を行うため、カリフォルニア州労働・雇用開発局(California Labor and Workforce Development Agency, “LWDA”)に再び動きがありました。2026年2月、LWDAは、PAGAに基づく請求の提訴手続き、是正手続き、および和解手続きに対して、より厳格な行政管理を実施することを目的とした規則案の公示(Notice of Proposed Rulemaking)を発表しました。
PAGAに基づく訴訟を提起する従業員は、通常、雇用主(および規制当局)に対し、違反の疑いがある旨の通知をする際、曖昧で定型的な書面しか提出しません。そのため、雇用主は、本格的な集団訴訟に直面するまで、実質的な和解交渉や是正措置を講じることが不可能な状況にあります。これらの問題を解決するために提案されている規則案のうち、主要なものは以下のとおりです。
- 一般的に使用されている定型的な通知に代わり、事実に基づく具体的な主張を記載するよう設計された、LWDA起訴用標準書式の導入
- 年間200件以上の通知を提出する弁護士を記録するため、「高頻度申立人(high-frequency filer)」指定制度の創設
- (i) 和解による免責条項は、最初に提出されたPAGA通知に明示的かつ詳細に記載された違反の原因事実の範囲に限定することとし、(ii) 和解当事者に対し、係争中であり、かつ重複している同一の被告に対するPAGAに基づく訴訟を提起している他の従業員全員に和解による免責条項を通知することを義務付けること。
これらの提案にもかかわらず、一部の業界団体からは、このような規則の制定では大量訴訟の根本原因に対処できないのではないかと疑問が呈されています。高頻度申立人を特定するための判断基準をより厳格にしたり判定基準値を引き下げることをせずに、新たに標準書式を導入するだけでは、投機的な不当訴訟の件数を抑制するどころか、単に不当訴訟の提起を形式化するだけになるのではないかという懸念があります。
加えて、和解成立後、原告がPAGA通知の内容を修正することを禁止してしまうと、原告が請求権の包括的な放棄(global releases)を行うことが実質的に不可能となり、雇用主は残存する請求権を原因とするPAGA訴訟に延々と対応せざるを得なくなってしまうという事態に陥るため、規則案の立法趣旨が想定していなかった結果として、雇用主が和解する意欲を失ってしまう可能性があるとの懸念も示されています。これらの提案はまだ最終決定されていないものの、雇用主の間で高まるPAGA請求への不満に対処しようとするカリフォルニア州議会の一般的な意向を反映しているものと考えられます。
当事務所は、雇用法分野におけるこうした規制動向を引き続き注視してまいります。
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