国境をまたいで資産・負債を有する多国籍企業によるチャプター11(米国連邦倒産法第11章)に基づく手続が相次いでおり、米国の破産手続が国際的な文脈においてどのような効果を持つのかを理解することの重要性が改めて浮き彫りとなっています。
チャプター11手続の米国外での効力は、主としてautomatic stay(自動停止命令)の効力および破産裁判所の債務者財産に対する管轄の有無を考えるにあたり問題になります。米国法の下では、債務者およびその財産に対する全ての行為を停止させるautomatic stayは、国内外を問わず適用されます。例えば、In re Soundview Elite, Ltd., 503 B.R. 571(Bankr. S.D.N.Y. 2014)事件において、裁判所はチャプター11申立ての時点でautomatic stayがただちに発効し、域外にも適用されると判断し、米国法上は、その後に外国の裁判所で行われた手続は無効であるとしました。また、米国法上、破産裁判所は、在外資産を含む、債務者の全財産について管轄権を有します。
もっとも、上記のような域外適用の効果を実務上及ぼすにあたっては、米国外の債権者に対してエンフォースメントを行うことが必要となります。上記のSoundview Elite事件において、裁判所はautomatic stayが域外で効力を有するからといって、米国裁判所が外国裁判所を支配できるわけではないと明確に述べ、破産裁判所が域外の行為を差し止めることができるのは、当該裁判所が人的管轄権を有する当事者に限られることを強調しました。さらに、米国法上は連邦破産裁判所が在外資産を含む債務者の全ての財産について管轄権を有しますが、これは各国の国内法上は必ずしも当てはまりません。したがって、米国裁判所の命令等を実際に執行するには、多くの場合、外国裁判所の協力が必要となります。特に、米国と日本を含むUNCITRAL国際倒産モデル法を採用している法域では、この傾向が顕著です。このように、域外に及ぼす米国破産裁判所の命令の執行には外国の協力が必要不可欠であり、それが国際的なエンフォースメントを行う上の課題となっています。
まとめると、チャプター11はautomatic stayや全世界に所在する資産への破産裁判所の管轄権といった域外適用され得る効力を有しますが、それは米国法上の話であり、こうした効力の実際のエンフォースメントは、国際協調や外国の国内法に大きく左右されます。
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