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ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

マレリのChapter 11手続におけるCritical VendorおよびForeign Vendorの取り扱いについて

6.19.25
関連業務分野 商事/競争/取引

マレリは2025年6月11日にChapter 11を申し立、連邦破産法第362条に規定される自動停止(automatic stay)に基づき、申立前債務の支払いを停止しましたが、同12日、デラウェア州破産裁判所はInterim Order(暫定命令)を発令し、再建中の事業継続を目的として、一定の枠内での特定の取引先に対する随時の支払いを認めました。

債権区分 中間上限 最終上限
Foreign Vendor $265 million $1.26 billion
Lien債権者[1] $115 million $210 million
503(b)(9)債権者[2] $145 million $490 million
Critical Vendor $50 million $110 million
合計 $575 million $2.07 billion

原則論として、Chapter 11申立前の債務の随時の弁済は自動停止の趣旨に反し、債権者間の公平を損ねるため禁止されます。しかし、以下の理由で例外が認められることがあります。

  • 事業の継続:未払いが続くと重要部品等の納入停止が発生し、操業停止による損失が拡大する。
  • 事業価値喪失の防止:限定的な支払いによるコストは、完全な生産停止による価値喪失より小さい。
  • 法域による差異への対応:一部の米国外の取引先は米国裁判所のstayを無視する恐れがあるため、支払いが必要な場合がある。

本件Interim Orderでは、上記のとおり、4つの類型の債権者に対する一定額を上限とした随時弁済が認められました。

Critical Vendor該当性の判断

Critical Vendorとは、当該サプライヤーに対する支払の停止が即時かつ深刻な業務停止を招くサプライヤーをいうとされます。マレリはこれを選定するにあたり、以下を考慮するとしています。

  • 単一または限定的なソースであるか(代替不可であり、切替コストや切替えによる遅延が大きいか)
  • 契約または規制上必須であるか(顧客との契約や法令等により、継続して供給を受けることが必要となるか)
  • 切替コスト(切替コストや機会損失が債権額を上回るか)
  • 従前の取引条件により供給が継続されるか(支払いと引き換えに従前の条件での納入が約束されるか)

上記の結果Critical Vendorに当たるとされたサプライヤーは、マレリより、書面による合意を締結することを求められる可能性があります。

Foreign Vendor該当性の判断

Foreign Vendorは、米国内プレゼンスが乏しく、エンフォースメントが困難なサプライヤーであるとされ、以下のような特徴を有するとされます。

  • 米国内プレゼンスの欠如:米国に拠点や資産がなく、stayの効力のエンフォースメントが難しい
  • Stayを無視するリスク:未払いがある場合、米国外の裁判所で救済を求める可能性が高い
  • 特殊な供給:海外拠点向けの特殊部品・技術を提供しており、生産継続に不可欠

ここで、米国子会社を有し、外国に本社を有するサプライヤーは、以下の理由により、Foreign Vendorに該当しないものと考えられます。

  • 米国内プレゼンスの存在:子会社を通じて米国法域に属し、stayの強制力が及ぶと考えられる
  • エンフォースメントの容易性:裁判所命令の効力が子会社に及ぶことに問題がない

Interim Order (暫定命令)のFinal Order(最終命令)化に関する手続

6月16日には、Interim Order(暫定命令)を最終命令(Final Order)へと移行させるとともに、DIP ファイナンスやexecutory contract(未履行契約)等に関する係属中の申立を審理するための審理期日が行われました。本稿執筆時点において、同審理期日の結果や関連する裁判所命令は記録に顕れておらず、当面は本件Interim Orderに基づく権限が有効な状態が続いています。

留意点

  • Critical VendorまたはForeign Vendorへの該当性は、債務者であるマレリが判断します。
  • これらに該当するものとして随時支払いを受ける場合、従前の取引条件での継続納入と契約の不解除が要求されると考えられます。
  • 上記約束に違反した場合には支払いが否認され、払い戻しが必要になる可能性があります。

商取引債権者への推奨事項

  1. 該当性の検討
    • 上記に示したCritical VendorおよびForeign Vendorへの該当性を評価し、必要に応じて関連する証拠資料を準備
  2. 債務者とのコミュニケーション
    • マレリの購買担当者または事業再生担当者と連携し、上記各類型への該当性や条件を協議
  3. 債権届出手続のモニタリング

本稿についてのご質問は、佐藤嵩一郎弁護士(ksato@masudafunai.com)までお寄せください。


[1] Lien 債権者とは、破産申請前に提供した商品やサービスに基づく債権のためにマレリの資産に対して法律上のlienまたはsecurity interest(担保権益)を有する当事者を指します。

[2] 連邦破産法第503条(b)(9)は、破産申立日の20日前以内に債務者に納品された商品の価額について、供給者に対しadministrative expense(手続費用)として優先的に支払いを受ける権利を認めています。これに該当するには、マレリに対し、(サービスではなく)商品が、通常の取引の一環として、2025年5月22日から6月11日までの間に納品されている必要があり、これに該当する債権者は、対象となる商品の価額を明細記載したproof of claim(債権届出書)を提出する必要があります。

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