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ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

AIの支援を受けた発明の特許性に関するガイダンス

3.28.24
関連業務分野 知的財産テクノロジー

人口知能(AI)テクノロジーは、急速に発展し続けており、各産業・商業における魅力的かつ無限にも思える利用機会を提供しています。学習させることにより新たなアウトプット・データを生み出すことのできる機械学習モデルを利用した生成AIテクノロジーの最近の進歩によって、AIを研究開発や製品エンジニアリングのツールとして使用して、既存製品を改良し、新しい製品を生み出すことができるようになりました。今日では、ソフトウェア開発、新しい化学化合物の創出、さらなるサポート力と耐久性を備えた新たな格子状の構造の靴の設計、より効率的な航空機の翼端の開発など、様々な用途や産業のイノベーションに、すでに生成AIツールが利用されています。近年生成AIテクノロジーが進歩したとはいえ、この技術はまだ初歩段階にあり、今後も様々な産業に普及し成長し続けることが予測されます。

イノベーションにおけるAIの役割が拡大し続ける中で、AIツールの利用が特許性に与える影響を考慮することが重要です。

Thaler v. Vidal, 43 F.4th 1207 (Fed. Cir. 2022)において、連邦巡回区控訴裁判所は、AIを特許の発明者または共同発明者として認定することはできないと述べ、特許法に基づき発明者として認定されるのは自然人のみであると判示しました。したがって、AIにより考案された「発明」を特許化することはできません。しかしながら、本事件で連邦巡回区控訴裁判所は、「人がAIの支援を受けて考案した発明が特許保護の対象となるかどうかという問題は[     ]提示されていない」とし、この点については明言しませんでした。

2024年2月13日、米国特許商標庁(USPTO)は、AIの支援を受けた発明の発明者適格に関するガイダンスを発表しました。本ガイダンスは、「AIの支援を受けた発明は一律に特許化できないわけではないものの、特許は、人の創意工夫に対してそれを奨励し報酬を支払うものとして機能するので、発明者適格についての分析は、当該発明に対する人による貢献の度合いに焦点を当ててなされるべきである」と分析しています。本ガイダンスによれば、AIを用いて発明がなされた場合であっても、「自然人が発明に相当な貢献をしている」限り、依然として特許による保護を受けることは可能です。とりわけ、自然人は、特許や特許出願における各クレームにおいて相当な貢献をしていなければなりません。

本ガイダンスでは、自然人がAIの支援を受けた発明に相当な貢献をしたか否かを決定するには、Pannu v. Iolab Corp., 155 F.3d 1344 (Fed. Cir. 1998) で掲げられた3つの「Pannuファクター」に基づいて分析すべきであると述べています。しかしながら、本ガイダンスは、「AIの支援を受けた発明における自然人の貢献が相当なものであるか否かを確認することは難しく、明快なテストは存在しない」ことを認めています。発明者適格を適切に判断できるように、本ガイダンスは、AIの支援を受けた発明にPannuファクターを適用する際に役立つ「指針」の非網羅的リストを提供しています。このリストには、特に次のような項目が含まれています。

  • 自然人は、AIシステムに対して問題を提示しただけでは、当該AIシステムのアウトプットから見出された発明の適切な発明者または共同発明者にはなりえない。しかし、自然人がAIシステムからある解決策を引き出すため、特定の問題を念頭に、プロンプトを構築した場合には、それは「相当な貢献」と言いうる。

  • AIシステムのアウトプットを発明として単に認識し、評価するだけの自然人は、特にそのアウトプットの価値と有用性が通常人にとって明らかなものである場合は、発明者であるとは必ずしもいえない。しかし、発明を得るために、AIシステムから創出されたアウトプットに対して相当の貢献を行った者は、適切な発明者になりうる。

  • AIシステムの設計、構築または訓練が、AIシステムによって創出された発明に対する相当な貢献である場合には、状況によっては、ある解決策を引き出すため、特定の問題を念頭にAIシステムを設計したり、構築したり、または訓練したりする自然人は、発明者と考えられる。

  • 発明の出案に相当な貢献をすることなく、単に発明の創出に利用されたAIシステムを所有または監督している場合、その者は、適切な発明者とは考えられない。

さらに、本ガイダンスは、次のような注意喚起を行っています:(i) 出願人はUSPTOに対して開示義務を負っており、それには、「発明者として記載された者の貢献がAIシステムによるものであったために、その者が当該発明に対して相当の貢献はしていなかったことの証拠」の開示も含まれる。(ii) 特許実務家は、合理的な調査を行う義務のもとで、「発明者適格に関する調査では、発明創出のプロセスにおいてAIが使用されているか否か、およびどのように使用されているかについての質問も含めることができる。」

自社の研究開発および製品エンジニアリング・プロセスにおいて生成AIテクノロジーをすでに利用しているか、または利用を検討している企業は、AIテクノロジーを用いて開発された発明の特許による保護の取得にまつわる問題や課題を認識し、慎重に検討すべきであり、それに応じて自社の特許ポリシーをアップデートすべきでしょう。

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