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予測不能な費用発生のリスク分散のための モディファイド・グロス・リースの活用

6.27.23
関連業務分野 不動産

商業・工業用不動産物件の賃貸借契約の形態は、(1)グロス・リース(gross lease)、(2)モディファイド・グロス・リース(modified gross lease)、(3)トリプル・ネット・リース(triple net lease)3種類に大きく分けられます。商業・工業用賃貸借契約の形態として、グロス・リースを用いることはあまり一般的なことではありません。しかし、ポストコロナでは、貸借契約の延長や更新について交渉する際に、グロス・リースを採用している家主が、その取引条件を見直したり、またはこれまでの支払・費用体系を変更したりするケースが多いことがわかってきました。

グロス・リースをモディファイド・グロス・リースに変更する傾向が顕著ですが、その主な理由としては、建物や共用部分の修理・交換費用をテナントに負担させたいという賃貸人の意向が大きいようです。グロス・リースにおいて、賃貸人は、毎月テナントに賃料の総額(「グロス」)の支払いを義務付けます。そして受領した「グロス」賃料から十分な投資収益(return on investment)を得ることになりますが、そこから建物や共用部分の修理・交換費用を支払うリスクも負うことになります。「NNNリース」と表記されることが多いトリプル・ネットリースでは、テナントは、基本賃料(賃貸人の投資収益(return on investment)となる部分)だけでなく、建物や共用部分にかかるすべての費用(固定資産税、保険、光熱費、メンテナンスなど)を按分して支払う必要があります。モディファイド・グロス・リースは、この2つの形態の中間に該当するものです。

モディファイド・グロス・リースにおいては、テナントは基本賃料(他方、グロス・リースの場合は基本賃料の支払義務が唯一の義務になります)に加え、建物全体および共用部分の税金、保険、共用部分のメンテナンスにかかる費用を按分して負担します。このような追加費用については、テナントと貸主の間の交渉により分割されます。各モディファイド・グロス・リースにより、テナントが負担する費用の種類は異なる場合があるため、それがトリプル・ネットリースとは異なる点です。

既存のグロス・リースからモディファイド・グロス・リースに切り替えることによって、支払・費用体系の変更を計画する賃貸人は、主に予測不能な費用をテナントに負担させることを期待しています。モディファイド・グロス・リースでは、予測不能な費用に対処するために、交渉を通じて、同契約が適用される費用の上限額を定めたり、または基準年を設定してかかる基準年を超える費用だけをテナントに負担させるなどの制限を設けることが可能です。モディファイド・グロス・リースへの変更を検討するテナントは、追加的な費用分担義務に留意し、その際に生じる責任を理解する必要があります。

モディファイド・グロス・リースに変更する際には、他にも検討すべき点が少なくありません。したがって、既存の賃貸借契約による支払および費用体系を変更するような修正または付加条項について考慮する際には、弁護士に相談することをお勧めします。本件に関して何かご質問がございましたら、ミッチェル・パラード弁護士(mpollard@masudafunai.com)または不動産部門のメンバーまでお問い合わせください。

© 2024 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。