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ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

トランプ大統領のコメントで浮き彫りとなるファーウェイ禁止令に関する混乱

8.16.19
関連業務分野 商事/競争/取引

米国は現在、ファーウェイ製品に関連して(もしくは関連する可能性があるものとして)3つの禁止令を敷いている。

  • 2018年8月に米国議会が通過させた、米国政府機関によるファーウェイ製情報通信機器の購入禁止(「政府調達禁止令」)
  • 技術またはサービスが「外国の敵対者」と関連するものである場合に、情報通信技術またはサービスの獲得、販売、輸入もしくは導入を禁止する2019年5月15日付の大統領令(「外国敵対者禁止令」)
  • 米国商務省から許可を得ない限り、ファーウェイおよびその関連68社への軍民両用製品または技術の輸出もしくは国内移転を禁止する2019年5月16日付の米国商務省による禁止令(「輸出禁止令」)

現在のところ、ファーウェイは外国敵対者禁止令で名指しされておらず、また米国政府も同禁止令の効果を明確にする規則を公表していない。しかしながら、メディアは概して、「ファーウェイは外国敵対者禁止令が標的とする企業である」と予測している。輸出禁止令の下での「軍民両用」製品は、一般的には商業目的の物品でありながら、国家安全保障上のリスクあるいは軍事転用の可能性が懸念されるもので、それゆえに米国商務省の規制品目リスト(Control List)に掲載されている製品である。(但し、当該リストには、米国政府が他の理由で保護を望む非軍事製品も含まれている。)厳密には、ファーウェイおよびその関連68社は、当該輸出禁止令の下、「エンティティー・リスト(Entity List)」(米国商務省がリスクとみなす個人・企業のリスト)に掲載されているため、米国の輸出規制対象品を扱う米国の輸出者やその他いかなる個人・企業は、軍民両用製品または技術を移転するために特定の許可の取得しなくてはならい。

「米国政府はファーウェイとは一切取引しない」とするトランプ大統領の2019年8月9日付の声明は、先週大々的に報道された。しかしながら、政府調達禁止令の下、米国政府がファーウェイ(もしくはZTE)から購入することは既に法的に不可能となっていた。紛らわしいことに、トランプ大統領はまた、この法的制限が中国との通商合意により変更される可能性があることを示唆したが、その真意は疑わしい。第一に、政府調達禁止令は議会が通過させた法律であり、大統領が同禁止令を無効にすることは難しいだろう。 第二に、米国政府がファーウェイおよびファーウェイ製品を標的に定めた際の論点と、米国政府が中国と「貿易戦争」を遂行することの論点はかなり異なる。基本的に、米国政府のファーウェイに対する措置は、「ファーウェイ製品の拡散は、中国によるスパイ活動およびサイバー戦争行為の増加リスクを高める」との米国およびその同盟国の情報機関による評価に基づくものである。中国原産品に対して一連の輸入関税を賦課する「貿易戦争」は、表向きは「中国の商慣行が米国企業にとって不公平である」との米国政府の決定を理由に正当化されている。しかし、ファーウェイおよびファーウェイ製品に対する上記の禁止令は、「貿易戦争」で対処しようとする被害と法的かつ哲学的に種類を同じくするものが根底にあるわけではないため、これらの禁止令全て(もしくはいずれか)が何らかの通商協定により解決されるのかは、予想が難しい。

ちなみに、「ファーウェイに対する輸出禁止令を緩和する」としたトランプ大統領の2019年6月29日付コメントは、当該禁止令の下での影響に大きな変化を与えているようには見えない。 まず、ファーウェイおよびその関連68社はいまだエンティティー・リストに掲載されたままであり、規制対象品および技術を彼等に移転するには引き続き許可の申請が必要である。また、米国政府によるファーウェイおよびZTE製品の購入を禁止する法案が2018年に議会を通過した際や、米国輸出規制の徹底的な見直しを行った際、議会は、国家安全保障上の懸念を理由に起動させた輸出規制を解除する案を、ホワイトハウスが通商協定を結ぼうとしているからとの理由だけで、明らかに否決した。後者の点は、ファーウェイに関する政策に何ら正式な変更が行われていない理由の一つであると思われる。正式な変更を行わない代わりに、ホワイトハウスと米国商務省は、世界的に入手可能でかつ国家安全保障上のリスクとならない「一般的商品(general merchandise)」に関しては、ファーウェイへの移転のための許可申請を認めることを検討すると発表した。しかしながら、米国政府は、ファーウェイへのその他製品・技術の移転については、許可申請を却下することを基本方針として維持したままである。

結局のところ、米国当局は米中通商協議を通して達成され得ることをほぼ毎週のようにコメントしているが、米国政府によるファーウェイ製品の購入を禁止する政府調達禁止令およびファーウェイへの販売を禁止する輸出禁止令ともに、引き続き有効なままである。外国敵対者禁止令については、その施行規則が最終決定されなくてはならない状況にあるものの、同禁止令は米国市場における全ファーウェイ製品の閉め出しを含むものであると考えられている。さらに、ファーウェイと既に取引関係にあるビジネスについては、既存システムを維持することのみを目的にした「一時的な一般ライセンス(Temporary General License)」が発行されていたが、これも2019年8月19日に期限切れとなる。同日以降、米国輸出者からはもちろん、米国商務省の下で規制対象品もしくは技術を扱う企業(所在地は問わない)からも、ファーウェイ向けのハイテク製品やノウハウの移転が許可されることはほぼなくなるであろう。

このことは、当該輸出禁止令が米国企業のみならず米国外の企業にも潜在的に影響を与え続けているという事実を浮き彫りにしている。米国輸出管理規制の下、非米国人や非米国企業であっても、米国原産品や米国法により規制対象となっている米国産部品や技術が組み込まれた製品を扱う場合は、米国の輸出規制の対象となり得る。したがって、米国外に所在する企業であっても、米国政府によるファーウェイ禁止令の状況を注視し、自らに影響が及ぶ可能性がある要件については確実に遵守することが重要となる。

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